シーズン後半に入りタイトル争いが佳境となるスーパーGTは、真夏の三連戦のラストを飾る第6戦「鈴鹿1000km」を迎えた。
この大会はレース距離が長いことで規定により獲得ポイントが他のレースより多く与えられており、またランキング上位のマシンにウェイトハンデが積み重なっていることから、ランキング下位のマシンが一気にタイトル戦線に躍り出る大きなチャンス。
その可能性が非常に高いと予想されているのが、今シーズン常にトップクラスの速さを見せながらポイントに恵まれず現在ランキング7位に甘んじている46号車「S-Road MOLA GT-R」である。
現時点でのトップとのポイント差は26、ウェイトハンデはトップのちょうど半分にあたる50kg。この状況から46号車は、下馬評でも優勝候補の一角に名を連ねていた。
マシンカラーリングにアップデートが施され、決意も新たにこの鈴鹿に挑んだ。
【予選】 8月30日(土) 天候:曇り 路面:ドライ 気温:30℃ 路面温度:40℃(予選開始時)
■公式練習結果:10位 ベストタイム1’50.612(本山)
■公式予選結果:3位 タイム1’49.353(柳田)
例年より1週間ほど遅い時期の開催となったことでやや暑さが和らいだように感じたこの日、朝9時40分から開始された公式練習では絶好のコンディションとあって好タイムが連発。
トップタイムは早くも、コースレコードを上回った。ところが46号車の走り出しが遅れ、エンジントラブルもありこのセッションの周回数はわずか17周に留まった。セットアップも思うように進まず、やや出遅れることとなった。
だが、その不安は予選Q1で完全に払拭される。午後2時に開始された予選Q1に出走したのは本山哲。
ここまで数々の記録を手にしてきた本山もこの鈴鹿1000kmだけは優勝経験がなく、今回の優勝に対する思いは誰よりも強かった。
その思いがここで一気に背中を押した。残り時間8分となったところで一気に全マシンがアタックを開始し、デッドヒートとなったQ1。より輝きを放ったのが、本山がドライブする46号車だった。
本山は2周のウォームアップの後ファーストアタックで1’49.261をマークすると、さらに集中して挑んだラストアタックでは1’48.629という驚愕のタイムをマーク。
ライバル勢もチェッカー直前に軒並みタイムアップを果たしたが迫るマシンはなく、46号車はコースレコードという勲章とともに堂々のトップでQ2進出を果たした。
その後GT300のQ2をはさみ、GT500クラスのQ2が開始。Q1の結果によりポール候補の筆頭に一気に躍り出た46号車に注目が集まった。
柳田真孝を乗せた46号車はQ1と同様、残り7分過ぎにコースインすると2周のウォームアップを経て1周のアタックを敢行。Q1のタイムには届かなかったものの1’49.353という好タイムをマークし、決勝をセカンドロー4番手グリッドからスタートさせることとなり、今季初優勝の希望を繋げた。
●本山哲のコメント
「シーズンは残り3戦ということで、今回は非常に重要な一戦。上位に比べハンデも軽いので、もちろん優勝狙いで鈴鹿にきました。
公式練習ではセットアップが十分ではなかったにもかかわらず予選ではチームが頑張ってくれてマシンも仕上がりこれだけの速さを見せられたということで、マシンの状態としても十分優勝を狙えるレベルにあると思います。
ただ長いレースなので、様々な状況にうまく対応していって最終的にトップでチェッカーが受けられるようチーム一丸となって頑張りたいと思います。」
【決勝】8月31日(日) 天候:晴れ 路面:ドライ 気温:29℃ 路面温度:40℃(決勝開始時)
■フリー走行結果:12位 1’53.503(柳田)
■決勝結果:15位(14周)26.49.045(本山Dr)
事前の予報に反して、前日と同様に真夏の晴天となった鈴鹿。夏休み最終日となるこの日は36000人と、多くのレースファンがサーキットにつめかけた。
GT500クラスのニューマシンが初めて挑む真夏の1000kmレースで果たして何が起こるのか、例年以上のドラマをファンは期待した。
12時30分にスタートした約6時間にわたる173周のレースは、波乱のない静かな幕明けとなった。
交通安全啓発ャンペーンの一環として行われた白バイとパトカーによるパレードランから1周のフォーメーションラップの後、ローリングスタートが切られる。
4番グリッドの46号車は、本山がスタートドライバーをつとめた。本山は慎重にスタートを切ると、長丁場レースの定石通りにまずは着実にグリッド順をキープ。
序盤はタイヤをセーブしながらコンスタントな走行に徹し、反撃のチャンスをうかがう。10周目までは3位のマシンの背後にピタリとつけトップとの差を維持し続けた。
そしてGT500の上位がGT300クラスに追いついた11周目あたりからコース上ではペースを乱すマシンが現れ、接触やマシントラブルも起こり始める。
46号車にとって順位上昇のチャンスが訪れたかに見えた。
だが46号車のもとに訪れたのは、チャンスではなくアクシデントの方だった。
15周目、突如マシンにトラブルが発生し、異常を察知した本山はその周に緊急ピットイン。
トラブルの箇所はエンジンで、さらに排気口から出火という事態。ピットクルーはあわてて消火作業を行う。そしてマシンをガレージに入れ修復を試みたが、チームはコース復帰を断念。
1000kmのわずか1/10にしか満たない時点で、46号車は無念のリタイヤとなった。
●本山哲のコメント
「トラブルの原因は、まだはっきりと分かりませんが、それまで何の兆候もなくあの周回で突如エンジン出力が低下しレース続行が不可能な状況になりました。
優勝を目指してチームは最善を尽くしてくれましたが、リタイヤと言う選択を受け入れざるを得ませんでした。
トラブルさえなければ優勝や表彰台のチャンスが十分にあったレースだったし、トラブルで多少後退したとしても挽回が可能なレース距離だったので、あの時点でのリタイヤは非常に残念です。
シーズンは残り2戦となりましたが、ファンの皆さんやサポートしてくれている多くの方々の思いにこたえるためにも、最後までベストを尽くしポディアムの頂点を目指します。
マシンのポテンシャルには自信を持っているので、是非期待してください!
次のレースは初開催のタイ。全チームデータは無くイーブンで挑めるこのレースは、自分のキャリヤを生かして結果に結び付けるチャンス。
チームと共に優勝目指して全力で戦いますので、応援よろしくお願いします!」